トピックス−福祉の貧困〜一職場一事例〜

【10.12.15】福祉の貧困 〜一職場一事例〜     レポート〜

延長保育料が払えない…

 子ども2人(4歳児、1歳児)を民間保育園に預けているAさんは、自分たちでお店を営んでいます。保育園の保育料は昨年の所得に応じて決まりますが、Aさんはそれにより延長保育料が今年度はかからない階層になりました。今年のAさんの保育時間は10時半〜25時ですが、昨年は延長保育料がかかるため23時のお迎えでした。この保育園は10〜22時が基本保育料で預けられる時間になっており、その前後で延長保育料が発生します。Aさんは22時以降の高い延長保育料を2人分払うことが厳しいのです。店もまだ開いていて、お客さんがいるにも関わらず、子どもたちのお迎えにこなければなりません。帰る最中に子どもが起きてしまい、たまに店でその後みたりしているという話も聞きます。店は夫婦でやっていて、バイトを雇う余裕もなく、雇っても店が閉まるまではいないようです。子どもの発達からも夜は寝かせたいと言っておりましたが、そうしにくい状況がありました。今年度は延長保育料がかからないため、保育園が開いているギリギリに迎えにきます。
 また、1歳児を預けているBさんは、夫婦ともに美容師です。お父さんは店を任されていて店長をしています。同じ店でお母さんは働いていますが、正社員ではありません。
Bさんの子どものクラスは10時ぐらいから子どもたちが集まってきて散歩へでかけます。しかし、その時間から子どもを預けると延長保育料がかかってしまいます。それを昨年の末に個人懇談で話した際に、「延長保育料は払うのが厳しいので11時からお願いします」と言われました。「子どものことを思うと10時から来たいんですけど…」と言う言葉を聞き、貧困が子どもに直撃する事を感じました。

社会の矛盾が子どもへのしわ寄せに…

 2つの家庭とも、子どものことを大切に考えています。だからこそ、なんとか手助けしてあげたいと思いますが、私たち保育園の保育士という立場からは親の就労について口出しはできません。
 以前署名を集めている時、ある男性に『待機児童をなくさなくてもよい。親が子どもをみればいいと…しかしそうできないのは、今の労働がおかしいからだ。』と署名を書きながらお話してくださいました。待機児童をなくさなくてもよいというのはともかく、社会の働き方がおかしいのはその通りだと思いました。もっと親の働きがよくなれば、親自身にも余裕がでてきて、子どもたちにしわ寄せはこないのではと思いました。親も苦しんでいると思います。

問題はどこにある?

 一つは親の働き方(働かせられ方)。正規職員は人員減による労働強化と長時間労働を余儀なくされる。非正規労働者は低賃金・不安定雇用により、生活のためにダブルワークを強いられる。そういった、労働者使い捨てが当たり前の理論が蔓延していることが問題としてあげられます。
 もう一点が、必要な保育を受けたいのに、受けるほど利用者負担が増える現在の制度設計があります。子どもや親の視点に立って、延長保育も「必要な保育」として国・自治体が認めれば、そこに相応の運営費補助が発生し、過度の利用者負担はなくなります。しかし、とにかく保育に必要な経費を圧縮したい政府は、そういった方針はまったく打ち出しません。
 では「子ども・子育て新システム」(以下「新システム」)に移行したらどうなるのか?状況はさらに悪化します。「新システム」では、一日の基本保育時間を低く設定される上、延長分の保育料は全額自己負担となるので、今以上に利用者負担は増大します。
 今以上に保護者(利用者)に負担を押し付ける「新システム」が導入されれば、延長保育料が払えなくなるため、否応なく子どもだけで留守番させるようなことが、各地で起こりかねません。

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